教員紹介
若林 克法 教授 (Professor Katsunori WAKABAYASHI)
1972年12月、奈良県生まれ。1995年筑波大学第三学群基礎工学類(物質・分子工学主専攻)卒業。2000年筑波大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。広島大学工学部第二類(電気系)電子物性工学大講座助手、同大学大学院先端物質科学研究科助教、スイス連邦工科大学チューリッヒ校理論物理研究所(ETH-Zürich)研究員、物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)独立研究者などを経て、2015年、本学科に着任。2007年〜2011年の間、JSTさきがけ兼任。日本物理学会論文賞(2003)、文部科学省若手科学者賞(2010)、日本学術振興会賞(2017)を受賞。現在の研究領域は、物性理論およびナノサイエンス(理論)。特に、グラフェンなどの原子膜物質におけるナノスケール効果、量子輸送現象、磁場効果、磁性、光物性、トポロジカル材料の物性とフォトニック結晶への応用などに興味がある。現在、物質・材料研究機構客員研究員、大阪大学招聘教授ほかを兼務。
研究室ホームページ
物質設計理論
グラフェンやナノカーボン、原子膜物質などの電子物性を、理論・計算によって解明することで、ナノスケールの領域で顕著に起きる特異な電子物性に見出し、新しい機能物性を理論的に予測し、設計を行っています。新しい理論的な知見を基に、ミクロな電子論の立場から、高効率のエネルギー輸送や変換などを指向した様々機能を有する新しいデバイスの設計を行います。
担当科目一覧
- 先進エネルギーナノ工学入門(学部1年前期)
- 物理数学I(学部2年前期)
- 物理数学III(学部3年前期)
- 物質設計論(学部3年後期)
- 先進エネルギーナノ工学詳論(学部4年前期分担)
KEYWORD
理論ナノ科学、物性理論、物質機能設計、原子膜物理、グラフェン、ナノカーボン、計算物理
研究テーマ
研究の背景
私たちの身の回りには、様々な物質があります。銅などの電気を流す金属、シリコンなどのエレクトロニクス素子に利用される半導体。あるいは、ダイアモンド、黒鉛、カーボンナノチューブは、どの物質も、炭素原子だけからなるにも関わらず、ダイアモンドは絶縁体、黒鉛は金属、カーボンナノチューブは金属または半導体となります。これらの違いは、物質内部の原子がなす結晶構造と、結晶中での電子状態が起源です。これらをミクロな視点で明らかにするのが、電子物性理論です。
研究テーマと成果
ナノテクノロジーの急激な進歩によって、グラフェン(炭素原子だけからなる一原子分の厚みしかもたないシート)などの一原子層の厚みしかもたない究極的に薄い物質などが電子・光デバイスに応用されつつあります。そこでは、従来の半導体物理学では記述できない物理現象が数多くあることが分かってきています。さらに、ナノスケールの世界では、表面やエッジの効果が電子物性に強い影響を与えることが分かっており、そこではマクロな世界では現れない特異な量子物理現象が現れます。このため、従来のデバイス物理理論を単純に使うことはできず、それらを書き換えていく必要があります。新しい理論的な知見を得ることで、高効率のエネルギー輸送や変換などを指向した様々機能の設計ができるようになります。私たちの研究室では、(1) 基礎理論の構築、(2)理論を応用した機能設計、(3)新しい物性の予測という大きな三つの目標をかかげて、解析的な理論計算と大規模な数値計算によって、研究を進めています。
教育目標
世界で通用する研究者・技術者を育成します.関西学院のスクール・モットー「Mastery for Service」を体現できる世界市民を育てます。
共同研究先一覧
物質・材料研究機構、筑波大学、東京大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH-Zurich)(スイス)、大阪大学、埼玉大学、青山学院大学、インド科学教育研究大学ティルパティ校(IISER Tirupati)(インド)、Exeter大学(英国)、インド統計大学(ISI)(インド)、香港理工大学(香港)、千葉大学、名古屋大学、東北大学など
研究室インタビュー
若林研究室に入ったきっかけは?
物質の電子物性を理論的に研究したいと思い、この研究室に入りました。
やはり数式を使って自分の頭で理解しないと、せっかく物理をやってるのにもったいないと思いました。
以前から理論物理に興味を持っていたこともあります。
特に、グラフェンは、色々な特徴的で新しい物性をもつこと、さらに応用が期待されていることなどから、非常面白い物質だと思います。そのため、とても興味深く研究を進めています。
理論研究室であるので分野にほとんど制限なく、興味を持ったことを自分の研究にできるのも大きなメリットだと思います。
今後の夢・目標を教えてください
グラフェンなどの原子膜を用いた新しい量子デバイスを理論的に設計したいですね。
その他には、研究を通して、プログラミングのスキルや論理的思考を身に付けたいと考えています。
物理なので、ただ数式を追うだけでなく、直感的な解釈や理解ができるようになりたいです。
現在はどんな研究をしているの
現在は物理学会誌や学内からアクセスできる学術雑誌の文献などを読んで、卒業研究への準備を進めています。
また、これとは並行に、量子力学と固体物理を基礎から勉強しています。
量子力学は週2回のゼミで、少し高級な記法を用いた量子力学を学んでいます。
固体物理は週1回若林先生に講義をして頂いています。固体物理の基礎からグラフェンへの応用を学んでいます。
非常に分かりやすい固体物理の講義内容はYouTubeにアップロードされていて、誰でも見ることができます。
若林研究室のいいところは
理論・計算の研究室ですので、居室が研究室と一体化していて、とても広いです。実験系の友達が羨ましがっていました。
メンバーも仲が良く、ゼミも和気あいあいとしています。しかし勉強モードとなるとみんな静かに勉強をしています。
博士研究員が外国人の方なのですが、非常に明るい方なのでよく話してくれて、大学にいるだけで英会話の力が伸びているかもしれません。
どういった所に研究の面白さ・やりがいを感じていますか
研究室に入り、それまで電子物性論について、曖昧に理解していた部分が、とても明瞭に理解できるようになってきました。
この点で、とてもやりがいがあります。
また最近、数値解析のために、プログラミングの勉強もしています。
グラフェンのエネルギーバンド構造などを、数式の形からグラフに描くことで、自分で視覚的に理解することができて、とても面白いですね。
先進ナノエネルギー工学科のいいところは
2015年度に新設された学科で、先生方や古参の研究室の先輩方を筆頭に非常にエネルギッシュです。
物理学科とカリキュラムは似ていますが、エネルギーを作る・蓄える・運ぶ・使うというコンセプトで応用的で面白い研究を行うことができます。
工学系ですが、理論研究室は甘くなく、しっかりと物性理論を学べます。
グラフェンに興味をもったきっかけは?
もともと消費エネルギーを理論的がゼロであるデバイスを作る事ができるスピントロニクスという分野に興味があり、 グラフェンがこのデバイスに適しているということを知ったのがきっかけです。
インターネットで調べるとそれ以外の特徴のある物性がたくさんヒットしてその他の分野の応用にも興味が湧いてきたところです。