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2015年09月29日

理工学部セミナー:SI単位の再定義-kg原器がなくなる!電流(A)・温度(K)・物質量(mol)の定義はどうなる?-セミナー:SI単位の再定義-kg原器がなくなる!電流(A)・温度(K)・物質量(mol)の定義はどうなる?-

SI単位の再定義
-kg原器がなくなる!電流(A)・温度(K)・物質量(mol)の定義はどうなる?-

講師:金子 晋久 氏
産業技術総合研究所 物理計測標準研究部門
量子電気標準研究グループ 研究グループ長
開催日時:10月2日(金)15:10-16:40
開催場所:VII号館 104号室

今般のSI再定義をモチーフにした映画『1001グラム ハカリしれない愛のこと』が10月31日から日本各地で公開されます。ご興味のある方は下記の公式HPをご覧下さい。

講演内容の概要

国際単位系(SI)は、長さ、質量、時間、電流、温度、光度、物質量の量に対応する7つの基本単位(m, kg, s, A, K, cd, mol)とその組立単位などからなる単位系であり、その起源は近代度量衡の礎となる1875年のメートル条約の成立にまでさかのぼる。第1回国際度量衡総会(1889年)では、白金イリジウム合金製のメートル原器とキログラム原器がそれぞれ長さと質量の単位として承認され、各国に同じく白金イリジウム製の基準定規と分銅が配付されたた。日本にはNo. 22の定規とNo. 6の分銅が送られ、それぞれ日本の長さと質量の原器となった。その後、長さの単位(m)は、1960年にクリプトンランプの波長へと定義が移行し、さらに1983年には真空中を伝わる光の行程を基準とする新定義へ移行することで、基本単位は基礎物理定数に基づく基準へと改訂された。

一方、キログラムの定義においては、その誕生から120 年以上経過した現在でも、世界に一つしかない国際キログラム原器(International Prototype of the Kilogram)が未だその基準として用いられている。国際キログラム原器はパリ郊外にある国際度量衡局(BIPM)に保管され、世界の質量標準は国際キログラム原器との定期的な校正によって値付けされた各国のキログラム原器との比較の連鎖によって維持・管理されている。しかし、近年の計測技術の進歩に伴い、キログラムの定義においてもメートルのように人工物による基準から基礎物理定数へと移行させることが可能な状況となってきた。そしていよいよ、2018年に開催される第26回国際度量衡総会でSI単位の再定義が決定される見通しとなった。

また、今回の再定義では、質量とともに、電気、温度、物質量の基準も併せて改訂される。SI単位の再定義が我々の日常生活に直接的に影響を及ぼすことはない。しかし、レーザーによるメートルの再定義が、ナノメートルオーダーでの正確な長さ測定を可能とし、原子レベルで物質を制御する「ナノテクノロジー」の土台を築いたように、基礎物理定数によるより正確でより普遍的な質量・電気・温度・物質量の標準の出現は原子レベルでの正確な質量測定の基盤技術などを通して、「ナノテクノロジー」を含む先端科学や産業技術に大きなブレークスルーやイノベーションをもたらす可能性を秘めている。

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