2016年05月24日
6月3日(金)、理工学部講演会「量子化学計算による先端無機材料の機能解明とマテリアルデザイン」(大西 拓 三重大学大学院助教)
理工学部講演会を下記の要領で開催いたします。是非ご参加ください。
日時:6月3日(金)15:30〜17:00
場所:VII号館1F111号教室
講演者:大西 拓 助教(三重大学大学院工学研究科 極限ナノエレクトロニクスセンター)
タイトル:量子化学計算による先端無機材料の機能解明とマテリアルデザイン
【概要】
密度汎関数法(DFT法)などの高精度な量子化学計算の近似方法の理論開発により、遷移金属系化合物の量子化学計算が実用的に可能となってきている。例えば、研究事例として、遷移金属系化合物の磁気的相互作用の解明、有機金属系の触媒反応のメカニズムの解明などが挙げられる。
我々は、電池材料などに幅広く用いられているイオン伝導体に着目して、量子化学計算を用いてイオン伝導メカニズムの解明をこころみた。伝導イオンは、他の原子との化学結合特性を変化させながらイオン伝導する場合がある。我々が理論構築した”化学結合則”を適用すると、その化学結合特性の変化を検証することができる。例えば、燃料電池用のプロトン伝導体として知られているBaZrO3ペロブスカイト中をプロトンがイオン伝導する際には、伝導プロトンは酸素と共有結合を形成することがわかる。また、伝導プロトンが酸素原子ひとつと共有結合する場合(O-H)と酸素原子ふたつと共有結合する場合(O-H-O)があることがわかった。
この発表では、燃料電池や二次電池(リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池)に用いられているイオン伝導体におけるイオン伝導メカニズムを化学結合解析の観点から明らかにした研究成果を中心に解説する。
【参考文献】
(1)T. Onishi, Adv. Quant. Chem. 64, 31-81 (2012) Review
(2)T. Onishi, Adv. Quant. Chem. 70, 31-67 (2015) Review
(3)T. Onishi, T. Helgaker, Prog. Theor. Chem. Phys. 27, 233-248 (2013) Book
(4)T. Onishi, Prog. Theor. Chem. Phys. 27, 221-232 (2013) Book